Halcyon Days
『るろうに剣心』 『フルメタル・パニック!』 の二次創作を
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貴志祐介 『新世界より』 読了
2012 / 06 / 07 (Thu) 小説 ・ マンガ
貴志祐介さんというとホラー小説のイメージがあります。でなければ、ちょうど現在ドラマでやっている榎本シリーズ(主演は大ちゃんv)のミステリーでしょうか。ですがこの小説は、念動力が日常的に使用され、日本の人口が5~6万人まで減少した、千年後の日本を舞台にしたSF小説です。
牧歌的な情景の中で子供たちが遊ぶ様子にはユートピアを感じさせます。一方で業魔や悪鬼について昔話風の説話を挿入したり、町が注連縄で区切られた結界内に存在していて、内部は安全だが外部は奇妙な生物の生息する危険な領域であるという説明で、そこはかとなく不安を煽ります。主人公たちの成長に連れて、楽園の裏側に隠されていた事実が垣間見えていき、実はディストピアであるのがわかります。やがてはその歪みから、さまざまな悲劇が生まれてしまうことになります。
少年少女の冒険行やクライマックスの戦闘などを差し入れながらも、根底に描いているのは人間の業といえる救いようのない愚かさでしょう。人間のもつ嗜虐性や攻撃性が、新世界の成り立ちまでの道筋を作り、その後の徹底的に管理された社会を結果的に生み出してしまいました。なによりバケネズミと呼ばれる使役動物が存在する意味の怖さと残酷さは、その最たるものです。表面的なホラーっぽい場面やグロなシーンなどより、よほど恐ろしい……。
キャラクターについては、主人公を始め主要人物の思考や感情に微妙な違和感がありました。本人たちの意識していない残酷さがあちこちに描写されていて、それが違和感になっているようです。
たとえば班でキャンプに行ったときに違反行為を僧に見つかった際、僧が間もなく死ぬのではないかと思われても、死んでしまえば自分たちの行状がばれないですむとか死んだら自分たちが困るのでは、などと会話するシーンでは、誰も僧の容体を心配などしていません。他にも強い選民意識をもっていて、それに基づいて徹底的なほどバケネズミを見下す言動が随所に見られます。
特に主人公の早季は、悪鬼を倒したときに、悪鬼の死に対しては憐憫の情を抱いたのに、その手段と犠牲についてはまるで触れていないのはあまりに薄情です。その反面、野狐丸のことは哀れんで救いを与えます。
どれも意図してそう書いているのでしょうが、そういった言動のために感情移入がしにくいように感じました。
それから、構成に少々不満があります。主人公である渡辺早季の回顧録という形式をとっているので、冒頭の文章からある程度の結末は最初に見えてしまうからです。それに、早季の視点だけで語られているため、視界に入らなかった部分はまったく書かれていないわけです。個人的には、真理亜と守のその後や、野狐丸がどのように暗躍していたか、などを知りたかったかな。
あと、些細な疑問点。キャンプからの帰路に捨てたお守り袋とその中身は、いったいなんの意図があったのかがわかりませんでした。すっごく気になります。
……なんだか批判的な部分の多い感想になってますね(汗)。いえいえ、とてもおもしろかったんです。楽しんで一気に読んでしまいました。長さも内容も十分な読み応えがあり、質にも満足です。
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管理人プロフィール
梶原 千早
隠れオタクの同人女です。
愛犬とジャニーズが癒し。
趣味は読書で、小説とマンガが好き。ジャンルはSF、ファンタシー、ミステリー、アクションなど。
最近、カルトナージュを習い始めました
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